日本美術をひも解く〜東京藝術大学美術館

現在開催中の「日本美術をひも解く〜皇室、美の玉手箱」展に行ってきました。8月6日から9月25日まで開催しているのですが、前後半で展示内容が変わるため、9月の展示を観に行ってきました。

東京芸大美術館で開催されているのですが、その日は丁度芸大祭も行われていて、上野がとても混んでいました。芸大の入口には行列が出来ていてビックリ。と思ったら、「美術館の方はこちらにどうぞ」と言われ、すんなり入場できました。あの列は芸大祭に入場する方の列だった…。チケットを購入するのに少し並んだので、オンラインで買えば良かったと後悔しつつ、10分程度並んで購入し、早速会場へ。

結構混んでいて、教科書でお馴染みの国宝「蒙古襲来図」や伊藤若冲の「動植彩絵」など(こちらも昨年国宝になりました)は展示物の前に行くのに少し時間が掛かりました。今回はその伊藤若冲の「動植彩絵」が観たくて行ったのですが、人に負けてしまい、へばり付いてガッツリ見られなかったのが残念。一部が原寸大で印刷されている若冲の図版「100%若冲」をよく見ているのですが、どうしても若冲は細かい技法が魅力なので近寄ってじっくり細かいところまで見たくなってしまうんですよね。絵の目の前に行くのにメゲて人混みの後ろから絵全体を視界に入れると、印象が若干変わります。細部を見ていると、神経質なまでに緻密で若冲の緊張感が感じられるのですが、全体を見ると、穏やかで静的な印象を受けました。

若冲を見に行ったのだけれども、1番のお気に入りは、やっぱり(?)岩佐又兵衛「をぐり(小栗判官絵巻)」でした。一部しか見られないのがとても残念なぐらい面白い絵でした。江戸初期の絵画には珍しい陰が描かれ、建物も人物も細部にまでこだわって描かれていて興味深かったです。原寸図版『100%又兵衛』を作ってくれないかな。でも岩佐又兵衛はまだマイナーな画家なんですね。この作品にはそんなに人が群がっていなかったのでじっくり観られました。良いのか悪いのか…。

東京藝術大学美術館公式HP

クリストとジャンヌ=クロード展〜21_21DESIGN SIGHT

クリストとジャンヌ=クロード展〜21_21DESIGN SIGHT

先日、大好きなファッションデザイナーの三宅一生氏が亡くなったのを悼み、氏が創設した、六本木の東京ミッドタウンガーデンにある21_21DESIGN SIGHTに行ってきました。イッセイミヤケ プリーツプリーツのブラウスを着たりしながら。

「21_21DESIGN SIGHT」かっこいい。

現在は「クリストとジャンヌ=クロード 包まれた凱旋門」展が開催されています。

クリスト(1935年〜2020年)とジャンヌ=クロード(1935年〜2009年)は様々なものをラッピングする作品を製作しました。ラッピングする対象物は巨大で、美術館、海岸、谷、歩道、島などなど、包むことなど通常不可能な対象物ばかりで、包まれると日常見ていた風景が一変します。もちろん国や自治体に許可を申請し、安全性を確保するための入念な下準備が必要になります。実際に包むには建築の技術者に依頼しなければなりません。さらに永久的に展示は出来ないので、数日間だけのインスタレーションになります。

もちろん莫大な費用が必要になるのですが、その費用は、作品の完成図を描いた絵画作品を販売することによって、クリスト個人と財団で賄いました。

日本でも1991年アンブレラ・プロジェクトとして茨城県の水田に青い巨大な傘を1340本、アメリカでも同時期に砂漠に1760本の傘を展示しました。残念ながらこの時は日本でもアメリカでも事故が起きてしまいましたが、大きな話題になりました。

今回の展覧会では、1961年に構想し、2021年に実現した「包まれた凱旋門、パリ、1960-2021」の製作風景と凱旋門を包んだパネル(布)を展示しています。長い間構想し、また準備に時間を費やし、残念ながら二人の逝去後に実現したプロジェクトです。

巨大な包まれた凱旋門

パリのシンボルであり、フランス人の心の拠り所でもある凱旋門を包む事は、技術的にも難しく、また様々な交渉も必要となり、時間が掛かってしまいましたが、凱旋門が包まれると200万人の人が訪れ、二人の作品を見て歓喜しました。現代アートの作品を見ようと200万人が訪れるフランスってやっぱり芸術の国で、芸術に対して寛容なんだな、と思ってしまします。

私は、クリストの作品を残念ながら直接見る機会はもう無いと思いますが、写真で残された風景は美しく、非日常と日常とは何か、また芸術とは何か?という普遍的なことも考えさせられます。

クリストとジャンヌ=クロード 包まれた凱旋門(2023年2月12日まで開催)

21_21DESIGN SIGHT 公式HP:アクセス都営地下鉄大江戸線「六本木」駅、東京メトロ日比谷線「六本木」駅、 千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分。ミッドタウン・ガーデン内にあります。

水木しげるの妖怪 百鬼夜行展

水木しげるの妖怪 百鬼夜行展

美術展レポートの続きです。実は一番行きたかった、六本木ヒルズ東京シティビューで開催中の「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」をご紹介します。水木しげるは浮世絵や日本画の百鬼夜行に影響を受けていて、正統的な日本画の妖怪画家としての位置付けが出来るのではないか、というテーマでの美術展で、大変面白かったです。

歌川国芳の「相馬の古内裏」の髑髏、北斎の百物語「小岩さん」が元になっているイラストも。

入ってすぐには、スマホを使ってVRの妖怪を楽しめるスペースがあります。子供連れが多かったのでイベントとして良い企画だと思いました。アプリのダウンロードにちょっと時間がかかりましたが、その間にブロンズで作られた妖怪たちをスマホで撮影。アプリがダウンロードできたらブロンズの妖怪たちの周りや窓際でVR妖怪達を探します。妖怪を見つけるのに手間取ったりして、見つけたらカシャリと撮影。子供達に混じってイベントを堪能しました。

こなきジジイ
周りにVR妖怪が隠れているかも?

その後は水木しげるの生い立ちと青春時代の経験から妖怪に興味を持った経緯が漫画の展示と共に説明されます。でっかい「ぬりかべ」も出現!

ぬりかべの後からは、日本画や浮世絵に出てくる妖怪と、水木しげるの妖怪が並べて展示されていて、そのルーツが明らかにされます。もともと、百鬼夜行も浮世絵も大好きな私としては一番楽しみにしていたスペースです!

ただ単に、昔の絵画を模して漫画を作っていた、と言うのではなく、それを水木しげるの世界観にリメイクして作品にしている。また、妖怪だけでなく、その背景画も物凄く緻密に描かれていてこの人はどんなに絵を描くのが好きだったんだろう、と感激してしまいました。この背景を一枚の風景画にしても楽しめると思います。また、完全に水木しげるのオリジナル妖怪で古い絵画にはない妖怪たちも沢山います。こちらも見応えがあります。

百鬼夜行」は古く、平安時代から説話や絵画として描かれています。昔からいろいろな姿になりながら、よくわからない存在、不気味で怖い存在としてバケモノは人々に恐れられました。現在も夏になると妖怪の本が本屋さんに並んだり、テレビや映画でもホラーものが増えたりしますが、人間誰しも、「そんなものいないよね」と言いつつ妖怪やお化けを心の中で恐れているもの。水木しげるの漫画はそんな日本人の心の中にいる妖怪をちょっと怖く、ちょっと可愛く、ちょっと面白く描いたことで世代を超えて愛され続けているのでしょう。私も子供の頃、ちょっと怖く、ちょっと可愛く、ちょっと面白いゲゲゲの鬼太郎が大好きでした。

お土産のカタログと、悪魔くん

水木しげる展」と言うことで、子供連れが非常に多かったです。「ゲゲゲの鬼太郎」のイベントを期待して来たんだろうな〜と思いますが(ヒルズの方では「ドラえもん」がたくさんいるし)、前半以外は所謂子供向けイベントではないので、後半はどんどん親子連れに抜かれます。正直、じっくり1点ずつ絵を見ている人はほぼいなくて、とても残念!と言うか、勿体無い!!絵の解説も丁寧にしてあるし、日本画を知らない人にも分かりやすい展示だと思うのに、、、。原画を間近で見れるなんて滅多にないから、親子連れに白目で見られても、ガッツリ絵を楽しんできました。是非、絵画好き、日本画好きの人にも見て頂きたい美術展でした。

余談ですが、絵を見ていたら、背後から、カランコロンと下駄の音が、、、。振り向くと、全身鬼太郎の少年が!でも鬼太郎も目玉親父もいなくて残念だったね。

そして、森美術館含め、こちらのイベントは22時まで開催しているので、大人だけの場合は夜行った方が良いかな〜と思いました。百鬼夜行だしね。

水木しげるの妖怪 百鬼夜行展

六本木ヒルズ東京シティビュー公式HP : アクセス・六本木ヒルズ森タワー52階 東京メトロ日比谷線六本木駅徒歩3分 入場料はイベントにより異なります

歌枕展〜サントリー美術館

歌枕展〜サントリー美術館

夏休みですね!もう8月も後半ですけど。この夏は久々に海など行って、史跡など回ってリフレッシュしたいと思っていたのですが、コロナが再燃してしまったので、そんな気分は消し去られ、結局遠出は諦めてしまいました。

その代わり今月は久しぶりに美術展に行ってきました。都内に出かける用事に合わせて行ったので、曜日と時間的に行ける美術展が限られてしまったのですが、今の私では選ばなかったような美術展にも行けて良かったと思います。

都内に出掛ける日は、月曜日だったのですが、公立の美術館博物館はほとんどが月曜日は休館日です。なので、月曜日に開館している美術館はどこか調べてみたところ、六本木にある美術館は火曜日が休館日になっていました。ぐるりと美術館巡りができるように、休館日をあえて火曜日で合わせているのですね!なんて賢い!

六本木には国立新美術館森美術館森アーツセンターサントリー美術館21_21DESIGN SIGHT富士フィルム写真歴史博物館があります。すっかり六本木はアートな街になったのですね。

休館日だけ出なく、時間も比較的遅くまで開館しているのも助かります。森美術館、森アーツセンターは夜10時まで開館です!仕事帰りでも飲んだ後でも行ける!さすが六本木、森ビル。

この日は、森美術館、東京シティービューで開催中の「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」とサントリー美術館で開催中の「歌枕」展に行ってきました。

まずは「歌枕展」からご紹介します。高級店が並ぶ東京ミッドタウンガレリア3階にあるサントリー美術館は木を多用した美しい美術館。高級感あります。

「歌枕」について勉強を。古来から日本人が愛した和歌。その中に繰り返し詠まれた風景が長い年月をかけていつしか特定のイメージが定着して行きました。たとえば、ススキ、といえば武蔵野、のように。そのように和歌によって特定のイメージが結びつけられた土地を「歌枕」と言います。その歌枕は和歌の中だけでなく、絵画や工芸品にも沢山描かれました。それらの作品を展示した美術展です。

平安時代から江戸時代までに製作された、和歌、絵巻、屏風、掛軸、硯箱や陶磁器、着物、櫛や簪などが展示されています。

昔は気軽に旅行などが出来なかった時代、絵画や工芸品を見ながら、思いを馳せていたのでしょうか。古くから日本人が感じた風景は現代を生きる自分にも染み込むものがあります。勉強不足で和歌はよく分からないので、絵画や工芸品の方が伝わってくるものがあります。もちろんこのような美術品(当時は日用品)を持てたのは貴族階級、武士階級、もしくは大商人くらいでしょうが、一つ一つ丹念に描かれ、また作られた作品には作者の思いを感じます。日本人として癒やされた美術展でした。

歌枕展

https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_3/

松林図 右隻

美しく引き込まれそうな松林 国宝・長谷川等伯『松林図』

A beautiful and enchanting pine forest: National Treasure Hasegawa Tohaku’s “Pine Forest Screen”

ブログを始めたばかりだし、とりあえず有名どころで大好きな絵画を紹介します。16世紀末、桃山時代に描かれた長谷川等伯の『松林図』です。国の宝というにふさわしい、美しく静謐でどこか寂しく、不思議世界に引き込まれてしまいそうな靄にたたずむ松林の絵です。 東京国立博物館に収蔵されています。

長谷川等伯 松林図 屏風絵 六曲一双 紙本墨画  右隻 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)国立文化財機構所蔵品統合検索システム

2年か3年前に東京国立博物館国宝の間に展示されていたので観に行って来ました。いわゆる水墨画なのですが、西洋絵画に親しんできた私には抽象画のような、印象派のようなイメージがあり、これを16世紀の日本人が描いたのかと衝撃的でした。実物の方が図版や写真で見るよりも水墨画らしく、筆の勢いなどを感じます。見る位置によって松林に入ったような感じが味わえます。

長谷川等伯  松林図 屏風絵 六曲一双 紙本墨画  左隻 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)国立文化財機構所蔵品統合検索システム

この作品の成り立ちは不明で、実は習作または草案ではないかとの説もあるようですが、松しか描いていないにもかかわらず、林の中の空気が見事に描かれ、見ていると胸が締め付けられるような、等伯のメッセージが感じられます。桃山時代といえば、戦乱の時代です。等伯はこの絵の中に宗教的なメッセージを込めたのかもしれません。