今年も半年が過ぎようとしていますが、今年は寅年ですね。正月前後にしか毎年の干支を意識しないので数ヶ月するとすっかり忘れてしまいます、、、。今年は寅年ですが、グローバル・タイガー・サミットが開催され、絶滅危惧種であるトラの保護について国際的に話し合われるそうです。
日本に虎は生息していませんが、古くから虎の絵は親しまれてきました。今でも、強い虎のイメージそのままに厄除けとして鶴や亀と同様に縁起物の一つです。武士の屋敷では来客者を威嚇するためにも使われたようです。

東京国立博物館蔵
虎は風を操るといわれているそうで、背景の
カーブは巻き起こした風でしょうか。
ふさふさの毛と柔らかそうな体。モフモフしたいですね。
出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

九州国立博物館蔵
南宋画の先駆者、熊斐の作品。
ふさふさの毛とくりくりの目が可愛いです。
出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)
虎の実物を見ずに描かれた日本画の虎はちょっと微妙です。写実的絵画が得意な応挙でさえ、微妙です。日本人にとっては空想上の動物と同じだったのかもしれませんが、猫科の動物と知っていたから、ちょっと猫っぽく可愛くなってしまったり、、、。空想上の動物の龍は大体かっこいいですけどね、、、。でも見ることが出来なかったからこそ、絵師による工夫がされていて、色々な虎がいるのが面白い。個性が発揮されています。いろんな顔していて、迫力があるものから、可愛い虎まで、こんなコがいた!って感じで楽しめます。

朝鮮の虎図を模写した作品
朝日新聞出版 「若冲への招待」より

可愛い虎。動植物を愛した若冲の優しさあふれる作品。
実物を見たらどんな虎を描いたのでしょう。
朝日新聞出版 「若冲への招待」より
トラは元々アジアに広く分布している野生動物です。インド、東南アジア、中国、朝鮮半島からロシアまで生息域がありますが、ここ100年で激減して、絶滅危惧種になってしまいました。と言われても、日本とは関係ないんじゃない?とは認識不足でした。虎は漢方薬として使用されていたため、近年まで密輸されていたようです。昔、虎の敷物なんてものもありましたよね。

平野美術館蔵
田原藩の三千両もの借財の代わりに三河国前芝の加藤家に送られたと伝えられる「三千両の虎」と呼ばれた作品。
新潮日本美術文庫「渡辺崋山」より
もちろん世界的に現在はトラの狩猟は禁止されていますが、密猟は今でもどこかで行われているそうです。ということは高値で買い取る商人がいるということ。そしてそれを買う客がいるということです。自然環境の変化も激減の一因ではあるようですが、ほとんどが人間の仕業です。ということは人間が救うことも出来るわけですね。地道な保護活動をされている現地の人には頭が下がります。
詳しくはWWFのHPをご覧ください。

虎は夜行性なので月とともに描かれることが多いそうです。
東京国立博物館蔵
出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

紙本一幅 島根県立美術館蔵
85歳晩年の作品。可愛い夢見る虎ですね。
新北斎展(2019年)カタログより