「熈代勝覧」複製絵巻を見に行ってきました。文化2年(1805年)神田今川橋から日本橋までのおよそ七町(760m)を描いた絵巻物です。ベルリン国立アジア美術館収蔵の作品ですが、東京メトロ銀座線、半蔵門線「三越前」駅、地下コンコース内に約1.4倍に拡大した複製画を展示しています。
こちらは洛中洛外図のように詳細に江戸の様子が描かれています。作者は不明ですが、浮世絵師のタッチなので、当時の有名な浮世絵師の作品のようです。浮世絵と言ってもパースも比較的しっかりとしていて人物描写も漫画のようで現代人でも見易いです。
文化2年当時の1軒1軒の商店の様子や、さまざまな仕事をしている職人、町人、武士、屋台、ボテ振り、籠屋などなど、犬もたくさん描かれ、江戸の繁栄期の歴史的資料としての価値とともに、風景は精密に、人物は一人一人が生き生きと描かれていて絵画としても素晴らしい作品です。
江戸は女性が男性の半分しかいなかったそうですが、こちらの絵画も圧倒的に男性が多いですね。大勢の人が集まり、日本橋のたもとの魚河岸はラッシュ並みの混雑です。これは喧嘩も起こるかも、ってしっかり喧嘩してる男の人も描かれています。
『熈代勝覧』の日本橋 (アートセレクション) [ 小澤 弘 ] 価格:2,090円 |
表通りの2階建ての瓦屋根の商店がズラっと並んだ街並みはきっと美しかったんだろうな〜と想像します。現在川越にも明治時代の建物ではありますが、蔵造の街並みが残っていますが、駅からだんだんと近いてビルの先に蔵造の建物が見えてくると、良い意味での違和感があり、ワクワクします。元々はそのような風景が江戸の町だった訳ですね。
ヨーロッパの古い街並みで、同じ色の壁と屋根の、お伽話に出てくるような可愛らしく美しい街が残っておますが、それと同じように、江戸も美しかったに違いないと思います。
こちらの作品は「熈代勝覧 天」とあるので、「地」もしくは「地・人」と、2巻ないしは3巻の作品だと思われていますが、残念ながらまだ発見されていません。ドイツでこの作品が見つかった時も始めは中国美術だと誤解されたそうなので、ヨーロッパにあった場合、よくわからない絵画としてどこかの個人宅の倉庫に眠っているかもしれませんね。でも日本にあったら空襲などで焼けてしまった可能性もあるので、ヨーロッパにあったほうが、見つかる可能性は高いような気がします。