山種美術館

先日山種美術館に行ってきました。渋谷区広尾にあるのですが、恵比寿に用事があったので恵比寿から徒歩で行きました。恵比寿駅からでも10分程度で行けますし、駒沢通り沿いなので迷うこともありません。アクセスは◎!


山種美術館は一見普通の企業が入っているビジネスビルのような建物の1〜B1階にあります。都内の私設美術館は、ここにあったんだ!という感じのビルの中にあることが多いですよね。

全国初、日本画専門の美術館として1966(昭和41)年に開館してから60年近く経ちます。山種証券(現SMBC日興証券)の創業者の山崎種二氏が設立してくれたそうです。公立の美術館・博物館は沢山ありますが、こういった個人や企業の美術館の役割も大きく、名品を沢山保護展示してくれるのは本当にありがたい限りです。


今回は「東山魁夷と日本の夏」展に行ってきました。じっくりと東山魁夷の作品を鑑賞したのは今回が初めてですが開催終了日の前日に行ったので混んでいました。

東山魁夷作「緑潤う」1976年 みずみずしく静謐な作品。青の霞がかったような表現が心に沁みます。

見たいと思っていた作品「年暮る」も見れて満足です。雪の日のシンとした静けさと美しさに魅了されました。
私は江戸時代の絵画が好きなので、明治以降の日本の絵画は無知です。西洋画からの影響が強く、西洋画としては未熟で、日本画としても何か欠けてる感じだと思っていたのですが、本当に私の無知のせいなのだと痛感しております。先日のTRIO展でも思ったのですが、大きく時代が動いた中で、作家がもがき苦悩しながら新しい表現を見つけ生み出された作品は素晴らしい物も多く、見応えがありました。

また、展示作品のほとんどが山種美術館の所蔵というのも素晴らしいですね。日本の名画を保護している重要な美術館の一つです。美術館の面積的にはあまり広くはありませんので、正直「もっと観たい!」という感じでした。

ほとんどの作品が写真撮影が禁止されていたので、写真で紹介できないのが残念ですが、現代の作家さんの作品も素晴らしかったです。京都絵美(みやこえみ)氏の「ゆめうつつ」(2016年Seed山種美術館日本画アワード大賞受賞作品)という、うたた寝をしていてまさに今、目が覚めたといったシーンの女性の絵画です。切なく美しく優しく、魅入られてしまいました。新しい作家さんを発見した感じで嬉しくなりましたが、家に帰ってから調べてみたらすごい人で、現在の日本画壇を担う御一人でした。東京で展覧会を開催されたら是非鑑賞に行きたいと思います!

京都絵美公式HP  HPで素敵な作品が見られます!

山種美術館公式HP 

皇居三の丸尚蔵館

皇居三の丸尚蔵館に行って来ました。改築工事中なので当分行けないと思っていたら、一部開館しているんですね。自分の情報がアップデートされていませんでした、、、。ということで現在開催中の「いきもの賞玩(しょうがん)」展に行って来ました。ちなみに賞玩とは「そのもののよさを楽しむこと。珍重すること。」(goo辞書より)です。

皇居の中にあります
大手門を入ってすぐです。皇居見学の観光客もたくさんいます。
大手門の中。階段を上がると塀の下に敵を返り討ちするための穴が空いています。


三の丸尚蔵館は皇室所蔵の宝物を保存管理、展示している博物館です。名品の数々があります。数年前に尚蔵館の作品が国宝になって話題になりましたね。尚蔵館は宮内庁管轄なので、国宝に指定しなくてもきちんとした管理がされている、と言う理由で国宝指定をしていなかったのですが、管理が独立行政法人国立文化財機構に移管されて一部国宝になりました。有名なのは狩野永徳の「唐獅子図屏風」や伊藤若冲の「動植綵絵」などがあります。国宝になったニュースの記事はもう3年前になるんですが「国宝指定」に書いてあるのでご覧ください。

山口素絢(やまぐち そけん)「朝顔狗子図」さすが円山応挙の弟子。応挙の絵だと思いました。期待通りのモフモフのワンコです!


今回の展覧会は尚蔵館所蔵の作品の中からいきものをテーマにした作品を集めて展示しています。最近、可愛い日本画の動物は人気ですよね。もふもふの犬とか擬人化した猫とかイロイロ。
平安時代の書画に始まり20世紀、さらに海外からの献上品まで幅広く展示されています。身近にいる動物達は生活を癒し楽しみを与えてくれ、作品となって目を楽しませてくれます。古代から現代まで永遠に好まれるテーマの一つですね。絵の中に脇役として描かれた動物に目が行ってしまいます。

長恨歌絵巻 下巻(作者不詳)江戸時代 細密で美しい。絵巻は楽しい。
長恨歌絵巻 下巻(作者不詳)江戸時代 鶴や鴨がいますね。


現在尚蔵館は改築工事中で一部開館なので、2フロアでの展示でした。正直物足りない。もう少し見たかったですが、全館オープンする予定の来年まで待ちましょう。展示数が少ないのでその分1000円と割安になっています!コンパクトながらも若冲の国宝「動物彩絵」のうち「池辺群虫図」も見れます。

12代西村總左衛門「刺繍水中群禽図額」 明治32年 刺繍、すごいです!!とても大きな作品。パーツしか撮るのを忘れてしまいましたが、全体も上品で素敵です。刺繍の最上級品だとは思いますが、刺繍の立体感や触感(触れませんが)と絵画表現が合わさるとこんなにパワフルで素晴らしい作品になるんですね。
加藤友太郎「玉蜀黍画花瓶」明治34年 姿も絵付けも美しい。骨董にハマるおじさんの気持ちが分かります。
工芸指導所「磁石応用四季草虫図衝立」昭和9年 蒔絵に虫が!!拡大したのでピンぼけですいません、、、ピンぼけだと余計本物の虫がついてるみたい、、、。

写真を撮り忘れてしまったのですが、沈 南蘋「餐香宿艶図巻」も展示されていました。江戸時代に当時の絵師達に多大な影響を与えた作家です。素晴らしくて沈 南蘋の作品をもっと沢山見たくなりました。

それと会期前半は岩佐又兵衛の小栗判官絵巻も展示されていたんですね、、。見そびれてしまった、、、。

いきもの賞玩」展は2024年9月1日までです。その後も皇居三の丸尚蔵館の貴重な宝物が鑑賞できる展覧会が続々と開かれますので公式HPでチェックしてみてください。また、国立近代美術館とも近いですし、出光美術館など皇居周辺には美術館が沢山あるので巡ってみるのもオススメです!

皇居三の丸尚蔵館公式HP

「いきもの賞玩」展 公式HP

国立西洋美術館 写本展

2024年7月現在開催中の『写本 いとも優雅なる中世の小宇宙展』を観てきました!

ルネサンスの以前、印刷技術が無い時代の本は一冊一冊書き写していました。それが写本。

私はデザイナーですが、Macでカタカタ打てば同じ書体がズラっと並びどんなに大きい文字も小さーい文字も綺麗に揃って打てます。挿絵も素敵なイラストをタダで探して来る事も出来る時代。でもこの頃は1文字1文字美しく綺麗に揃えて書き、美しい挿絵や装飾を描く。物凄く手が混んでいて、写本の職人、凄すぎます!素晴らしい!書いてみたい!文庫本のような小さいサイズの本もありました。すごい忍耐力と集中力が必要な作業ですね。

日本にも写経があり、そちらも美しいですよね。洋の東西を問わず、同じような文化が全く異なるカタチで表現されるのは面白いですね。

また、私個人的に西洋美術の中でも、中世絵画は大好きな時代です。ルネサンス以降やギリシャ彫刻のように完璧なバランス、美しさではないけれど、様々なデザインが施されていて、面白い!人物の絵もどこかデッサンがズレていたりするけど、それを上回る魅力があります!

中世らしい金を多用し、華やかで美しく、何故か文字に人物の顔が装飾されていたりして、楽しいデザイン。

中世はほぼ全ての作品がキリスト教に根付いています。ミサ用にミサ曲の楽譜が書かれているのも多く、4本線の楽譜の実物は初めて見ました!これは読めない…c(゚^ ゚ ;)ウーン

随分前ですが、イタリアの古都ボローニャに行った時に、中世の作品を集めた美術館に行ったのを思い出しました。中世絵画はマイナーで、私達以外に見に来ている人がいなかったような記憶がありますが、西洋中世絵画は素晴らしい!

写本を堪能した後、常設展も行きました。西洋美術館に行ったのは実は何十年振り?久しぶりにモネとかマネとか見ました。やはり美しかった。松方コレクションは点数も多く、改めて素晴らしいコレクションだと実感しました。中世以降の西洋美術史の流れを勉強するのにピッタリですね。

ジャクソン・ポロックも!

美術館はパワースポット!この夏はまだまだ行きます!

東京国立博物館 表慶館 カルティエと日本半世紀のあゆみ『結 MUSUB I』展

2024年7月開催中のカルティエ展に行って来ました!と言っても明日で終わりです、、、。なので急遽行って来ました。

カルティエが日本に初めてブティックを開いてから50年を記念して開催されました。カルティエの美しいジュエリーと日本人アーティストの作品が展示されました。

キラキラすぎて綺麗に撮れませんでした、、、。

カルティエは超高級店なので、普段おいそれとは入れません。でもここなら食い入る様に見ても咎められず、店員さんも来ない!じっくりカルティエの世界を堪能出来ました!日本文化にインスパイアされた作品が多数ある事も知らなかったので、日本の文様や桜などのモチーフがジュエリー作品として作られていて、誇らしく感じました。そしてやはり美しい!

日本人アーティストの作品は、まず横尾忠則の肖像画が出迎えてくれて、やっぱり横尾忠則だよね、とか思い、大好きな三宅一生のファッションを超えた作品に心打たれ、久しぶりに現代アーティストの作品を堪能しました!

そしてせっかく国立博物館に行ったんだから国宝見たいと!と、常設展も見て来ました!

今日の国宝の部屋は平安時代の絵画でした。これ平安時代なの?近代絵画っぽい感じ!当時斬新な作品だったのではないでしょうか。

その他もさすが国立博物館、見応えありました!今回浮世絵は大好きな歌川国芳!武者絵から金魚まで見れて満足!

今日は西洋美術館も行く予定なので、ミュージアムショップは今日は寄らず、、、。埴輪のぬいぐるみ欲しい、、、。

大吉原展

東京芸術大学美術館で開催中の大吉原展に行ってきました。

吉原を題材にした絵画を中心に展示されています。浮世絵、肉筆画と充実した展示でした。また、精密に制作された模型も見応えがありました。
特に美しかったのは肉筆画です。吉原というと浮世絵のイメージがあったので、大きなサイズで美しく彩色された作品に魅入られました。看板になっている絵も喜多川歌麿の肉筆画「吉原の花」という作品で、これを見れただけでも行った価値があると思いました。歌麿の作品の素晴らしさを再認識しました。

またこれだけ纏まって吉原の絵画が見られたのも資料的にも面白く、吉原の世界を堪能できました。もちろん図録も購入し、今後の活動に活かしたいと思っています。これだけ纏まった書籍ってなかなかないですよね。展覧会の図録はほんと助かります。


良い展覧会でしたが、春画が展示されていなかったのが意外でした。春画展では無いものの、吉原と春画は切り離せないと思うので春画も展示して欲しかった。といっても展示自体が難しいのかもしれませんね。18禁にするなどの配慮が必要になるのかもしれません。芸大美術館という施設ですし、やはりまだまだ春画の展示は難しいのかな。

写真で愉しむ三越アーカイブス

1月17日から日本橋三越本館1階中央ホールにて「写真で愉しむ三越アーカイブス」を開催しています。

こちらのイベントでVR江戸時空「日本橋編」を上映していただきました。1月17日〜19日までの3日間でしたがたくさんの方にご覧頂き、ありがとうございました。また、まさにここ、越後屋で上映して頂き感激です!日本橋の方々に見て頂けて本当に嬉しい限りです。

「VRのポップ作る」と言われていたので、え?そんなしょぼいの?って思っていたら、こんな上品なデザインのパネルでした!これはポップじゃ無い、、、。
VRでイベントの様子が見れます!まりんちゃんの振袖姿が可愛い💕

今回の上映会は株式会社EJE様にお任せだったので、VRゴーグルで2席設けている、ということ以外分からず、どのようなイベントでどのように展示されているのか、会場に行くまで知らなかったので、ちょっとドキドキでした。2席だし隅っこの方で地味な展示なんだろう、と思っていたら、中央ホールってあの有名な三越の階段のあるスペースだったんですね。流石の三越!上品で格式高く、驚き、というか感激しました!

越後屋の看板。「現金」ではなく「現銀」なんですね!庶民は銀を使っていた、ってことですね。

メインの展示は三越の歴史を語る浮世絵やポスターなどで、浮世絵好きの私は、まさかここで浮世絵鑑賞ができると思っていなかったのでラッキーでした!さらにテンションを上げながら越後屋の貸傘のレプリカに感激し、明治〜昭和のポスターや雑誌など、貴著な作品を見れて展示会として大満足でした。

越後屋の貸傘。これをお得意様に貸してたんですね。お客にとってはステイタスシンボルです。有名ブランドの紙袋を持つのと同じですね。
江戸時代の浮世絵に描かれた越後屋。
三越百貨店のポスター。一番左の「全館落成」に描かれている場所がまさにここ。歴史を感じます。
「みつこしタイムス」という三越の小冊子です。可愛い!
日本橋三越の建物は重要文化財になっています。大理石には巨大なアンモナイトが!!

明日から展示内容が変わるようですが、とても見応えがあって、良いイベントでした。さすが、本物は違うな。そんなところでVRを上映して頂き本当に感謝です!

江戸絵画の華展

『江戸絵画の華』展に行ってきました!と書こうと思っていたら、もう2月!1月10日に予約をして行ってきたのですが、日々色々な事に追われ、あっという間にひと月経ってしまいました。

今回は伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」を目的に行ってきました。本当は2年前に企画されていた展覧会ですが、コロナで延びてやっと今年お目にかかれました!

この展覧会は2019年にアメリカのプライス財団の日本画コレクション約190点が出光美術館のコレクションに加わりました。その中から約90作品を第一部と第二部に分けて展示公開しています。現在は第一部公開中です。

若冲の作品だけでなく他の作品も素晴らしく、これらの作品が日本に帰って来た事は本当に嬉しい。出光美術館には感謝しかありません。今回お目当ての「鳥獣花木図屏風」も、アメリカにあったので直接見る機会は無いかも、と諦めていました。本当に嬉しい。日本は戦争や震災もあったので、その期間アメリカで大切に保管されていたから今でも良い状態のまま作品が残っていたと思うと、エツコ&ジョー・プライス夫妻にも感謝です。そして審美眼の高さに感服します。

その「鳥獣花木図屏風」。いつも若冲の執拗なまでの細密描写には驚かされますが、この作品は同じ細密でも全く違う作品です。タイル状の升目を延々と描き、多くの動物と草木を描き、更に周囲に額縁の様な同じモチーフを描いています。今ならコピペで一瞬ですね〜。若冲の絵に対する執着、パワーを感じました。動物彩絵の羽の一つ一つを描く緻密さとは少し違って、新鮮でした。これを江戸時代の人が描いたなんて。この絵を見るといつもゴーギャンやアンリ・ルソーの「夢」を思い出します。もし彼らがこの絵を見たらショックを受けるのでは無いでしょうか、、、。

伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」江戸時代 18世紀  六曲一双 紙本着色 168.7×374.0cm
江戸絵画の華展カタログより

若冲も他の作家と同じように工房を持っていたようで、弟子たちと共に制作していたらしいことが近年の研究で明らかになっているそうです。これだけの作品を一人で手掛けるのは難しいですから当然と言えば当然です。コピペ出来ないですからね〜。以前から思っていたのですが、工房で弟子と共に作品を作っていても弟子が育つ工房と育たない工房があります。狩野派や浮世絵の歌川派などは多くの有名な弟子が生まれていますが、若冲や又兵衛、北斎も弟子を取っていたのにその弟子は有名になりませんでした。個性の強すぎる師匠は弟子を育てるのには向かないのでしょう。好きな作家ばかりですが、、、、。

また元々この絵画は日本間に飾られていた、というのも新鮮です。現在は美術館の展示ブースのガラスの奥にありますが、元々はどこかの、多分京都の武家か豪商の御屋敷にあったはずです。畳と襖の部屋にこの屏風!サイズも大きく迫力があります。ぜひそのシチュエーションで展示して欲しいものです、、、。

ちなみに今回の展覧会は予約制ですので、ゆっくり見られて大満足です!人混みの後ろからチラッと見える、なんて事はありません。余裕を持ってじっくり見られます。出光美術館の貫禄を感じます。第二部も予約しないと!

「江戸絵画の華展」出光美術館2023年1月7日〜3月26日